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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

」

「聖代の徳化にうるおっている訳でさ。ありがたいもので。」とAさんは敷島に火を点じた。

「白系の良民ですな。元は北樺太にいたのですがね、バルチザンの残党や赤化の無頼漢どもの脅迫から、とうとう堪えきれなくて南へ落ちのびて来たのです。気の毒なものですよ。それでも此方へ来てからはすっかり安心して、日本はいいといっています。もっとも、露領時代からの住民もいます、丸太式の小舎に。」

「校倉風のでしょう。あれはいい。豊原のはいり口でも見かけましたが。」

「いや、豊原には旧露西亜人街がありますよ。もっと揃っています。」とAさんが頬杖ついた。

「それはいい。ひとつ見に行って見ようか、吉植。」

「うむ、いいね。それからそのぉ、ツンドラ地帯というのは。」

「幌内川沿岸の一円の地帯で、つまり蘚苔類の堆積で深い幾段もの層を成しているのですね。下層は土に化したように、こう黒く、や、これがそれです。」と場長さんは後ろへ、室の一隅に据えた大きな硝子戸の長方形の棚を指さした。

なるほど、下部は黒く、中部はやや褐色に幾段もの脈がついて、上部は黄や青の苔の、そのツンドラの断層面がそのままそっくりその中に飾られてあった。