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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

大陸的な樺太の八月の驟雨である。いかにそれが異郷風の壮観であったかは想像してくれたまえ。

私は眺めていた。庁舎の押上げ窓の硝子を透かして。

目も彩な花壇の紅が、紫が、雪白が飜った。雨の飛瀑が襲来した。

フィルム。フィルムの急速度の線、線、斜線、

前面の菜圃が。――青黍、もち稗、花椰菜、火焔菜、トマトが、南瓜が、ああ大蕪が。

すばらしい、すばらしい。雨だ、音だ、銀だ、ああ、緑だ。霧だ、霧だ、霧だ。

亜麻が、ライ麦が、燕麦が、夏蕎麦が、菜の花が、ああ、また大麦が。

蝶だ、ああ、光った、乱れた。たたきつけられた、急角度に。

濛々と、隠見する遥かの白樺、たも。ああ、楡、ばっこ楊。家、家、家。

見渡すかぎりの牧草。

や、汽車が来た、紫の煙、煙。

「あ、彼処です。露西亜人のパン屋の家は。」と場長さんが、Aさんの話の中途で立ち上った。

先ほどの若い技手が、熱い熱い番茶を卓上の茶碗に注いでまわった。

「此方にも露人がいますか。」と私は振り返った。

「ええ、一、二家族居ついていますがね。」

「何をやって暮らしています。」

「パンを焼いたり、牧畜をやったり、それはおとなしいものです。