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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

待っていると、ぽつぽつと帰って見えた。

臨時列車も野天のプラットホームに這入って来た。

私たちは乗り込んだ。

だが、一行の全員を収容するまでには、なかなか間がありそうに思われた。

「露人の家がありますよ。」と教えると、「や、それは。」と退屈まぎれに飛び出す人々もあった。

見える、見える、あのカムチャッカ蘭の窓が。

雨は霽りかけたが、まだ露人の家のあたりの空は薄鼠色にうち湿っていた。いや、もう日が暮れかけても来ていた。

「や、来た来た。」

と、誰やらが叫んだ。

少年イワンであった。首から黄いろい紐を、前の函には、それこそふかし立ての露西亜パンを山盛りにして、活溌に改札口を出ると、ちょいと横向きの白い頸すじを見せた。

レールが間に四条。じっくりと枕木も小砂利も濡れて、右も左も椴松の林が遠い、遠い、遠い。

「あれです、露西亜人の息子は。」

とても物好きな観光団です。それはというので、それに少々腹も空き加減の、恰もよしというところで、乗降口からレールへ飛び下りると、また駈け上って、

「おい、パン。」

「おい、パン。」

「おい、いくらだ。」「おい。」で、一時に真っ黒に群ってしまった。