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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
私たち二、三人は博物館の参観、公会堂での観光団歓迎会へ臨む前のほんの小閑をぬすんで、その旧市街見物と出かけたのであった。
橋を一つ、また一つ、それから、やあ、此処だ此処だとなった。
道の左側にはささやかな流れがあった。私はその流れに沿って、また立ち留って見入った。
まったく校倉式の丸太組の露西亜人の家々は簡素で、また幽雅で、しかもいい寂色に古びていた。
純粋なものにこそ真実の意味の美しさがある。日本の古い百姓家にしてもその茅屋根の勾配といい、張り出しの廂といい、土間といい、煤びた大黒柱といい、外庭といい、いかにも日本固有の雅味がある。
それにしても、この原始的な丸太組の壁は、また飾りのない急勾配の板屋根の形は何といっていいだろう。硝子窓の劃り方もいかにも素朴で、それにどの家のどの窓にも何か色彩の濃い淡い草花の鉢を見せてある。流れに沿うた裏口のポーチも板張りの平面で、それに二、三段の無造作な周辺、水ぎわの緑の草、盛りの紅葵、あるいは向日葵、様々の夏草の花壇、柳の根といった風である。空には奥ゆかしい廂の上に枝垂柳が垂れている。こうしたのが露人の百姓家だと思うと、この頃の新開地の日本家屋の醜さがつくづく不快でたまらなくなる。