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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

うなずいて目礼して。ただ言葉が通じないかと思ったので、ただ黙って笑って見せた。向うでもきさくに笑って見せた。

川沿いの窓際にはやはり明るい草花の鉢を置いてあった。その硝子戸の外にも紅玉葵や黄蜀葵が咲き盛っていた。

外庭に向った一つの窓の前のテーブルには何か白いきれが拡げられてあった。洗って乾かした洗濯物らしかった。中婆が横向きに木の椅子に腰かけて、何か継ぎ剥ぎしていた。これも明るい頭巾をかぶっていた。二人ともよく肥っていた。

極めて簡素であった。

奥寄りの壁際には、これもお粗末な木のベッドが寄せてあった。薄紅色の浮織りのクッション、白い蒲団のカバー。

それだけ、

や、まだあった、白い笠の電球。

麦粉は黄色く、そうして白く輝いた。

饐えかかったトマトのにおいがした。

茶の赤い牡鶏が一羽戸口から這入って来た。閑かなその呼びごえ。

私たちは目礼して外へ出た。

二人のお婆さんはそれまで何一つ言をいうでなかった。だが、温かな親しさと、幼ない桃色の上気と、軽るい好奇心と何かの反射的亢奮とが彼女たちに見えた。

牛舎は空であった。主人が牽いて出たらしかった。

雨あがりの朝の光線が、今度ははっきりと穀物小舎の屋根の影を地上に映した。