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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

」と、誰やらが左の隅から延び上った。

「いや、あれはみんなで行ったのさ。物は見て置けというのでね。」とロッペン団の一人。

「そうそう、何でもないのですよ。ただ素通りで一遍だけぐるりと廻って見ただけのことです。新聞記者や土地の人も附いていましてね。盆踊りがあるというので行ったが駄目でした。」と私。

「だが、このお爺さんには驚いたよ。あっはっ、矢口の渡しの頓兵衛見たいで、ずかずかと這入って行くのでね。いや、閉口だ。」と庄亮。

「A君もA君だよ。石橋の袂で、それは亀の子のように蹲踞み込んで動かないのだからね。」とF君。

「いいお坊っちゃんさな。警部さんならちと下情には通じて置くものですぜ、風教視察という奴でね。」とタゴールさん。

「いや、つとめたいとは思いますがね。どうも。」と若いA君は、そこで赤くなって頭を掻いた。チラと眼鏡の下から大きな眼がはにかむところで、

「そりゃあかん。」と扇子をパチリは右の三番目だ。

ああ、笛だ、笛だ。

「ところで、この夜明けまで、踊りに踊りぬいた人がありますからね。おもしれえおもしれえ。」と庄亮。

「へへえ、」と、みんなが此方を見た。

「これは聞きものだ、何処でです、いったい。