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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

「君、何というの。」

「マッチョ。」と十歳ばかりの女の子が答えた。

「君は。」とまた私は次の女の子に訊ねた。

マッチョが「ウンノック」と代って答えた。

「この小さい子は。」

「ムンムック。」

そこへもっと小さい赤子を抱いて来た鳶色の老婆があった。いかにもツングース系の、顔が平たい琵琶型の、そして眼の細い、鼻のひしゃげた薄汚ない、まさかシャーマン教の巫女でもあるまいがと可笑しくなった。御亭主はエフロックで、自分がクルグックで、赤ん坊がドイッチだといった。とにかくこれでも揃って盛装して来たのであった。摂政宮殿下の御行啓を奉迎に、上流のツンドラ地帯から出て来て、そのまま部落に帰らずにいるという、水産課の人の話であった。

「オロチョンギリヤークの不潔さといったら、顔ひとつ洗わず、何もかも着物で拭くんですからね。それに米も麦も食べません。魚の干物ばかりで生きています。奴らは夏になると河のそばへ出て来て、冬は山地に籠るのです。」と、傍から私に話した。みんなが無表情な愚な目付きをしていた。そうしてまるで凍えかかった魚のように赤や黄や青のドロップをしきりに嘗めた。

「君の家へ行こうか。