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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
彼女はさして美人ではなかった。ただいかにも快活で熱情的で、やや投げやりにも見えた。
と、ママが奥から出て来て、眼で会釈をすると、すぐに善良な豊な笑顔になった。そうして窓際の小さなテーブルに、その大きな図体をぶっつけるようにして腰掛けると、無造作に壁に背を凭した。黒に近い葡萄色の軽装で両手を高くまくり上げ、薄紅い厚ぼったい耳朶には金の耳環を繊細に、ちらちらと顫えさしていた。二重頤の頬の肥えた、そうして七面鳥のように胸の高く張った堂々とした内儀さんであった。賢しい智識からこれと深められた目色は見えぬが、ただの農民の妻だったに過ぎぬが、いかにもお人よしの隔てのない愛敬がその顔にも表れていた。
私は先ずミルクを所望した。
セーニャが今度は後ろから、姉さんの首ったまにかじりつくと、矢庭にその左の頬を持って行った。姉さんは、身体を反り曲げて、おっほほと笑うと、何か歌の一くさりでも歌うように咽喉を転がした。
「セーニャ、姉さんは何という名。」私はそれで程よく寛ぐことができた。
「イフェミヤ。」
イフェミヤはその乱れた前額の毛をわざと巫山戯てその手で掻き散らした。
「はる、る、る、る。