轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

」という声が岸と舟とに起った。

「セーニャ、セーニャ。」とママが呼んだ。

だがランチは旋廻し初めた。濛々として黒煙が靡き、とどろくエンジンの音が人々を息ぜわしく焦立たせた。セーニャは幾度か飛び込もうとして、支えられた。石垣と舟との距離が一間になり二間になり三間になった。セーニャはしきりに母を呼び姉を呼んだ。だが、最早やどうにもならなかった。「乗せてやれ、乗せてやれ。」と私たちも叫んだが、今はそれも危険で近寄れなかった。と突然、火のようなセーニャの泣き声が起った。セーニャは両腕を犇とその顔にあてた。

ママは何か大声で呼び続けた。たぶん牡牛を家へ連れて帰るようにとでもいいつけたことと思われた。

高麗丸はこの沖合ではいかにも壮麗に、またいかにも文明の高貴な象徴であるかのごとく眺められた。そうして船室の灯が一斉に点いた明るい美しさといったらなかった。星、星、星、星、星。ママやイフェミヤは眼を輝やかして手を拍った。彼女たちには高麗丸が大貿易港神戸の一部であり、神戸はまた高麗丸の延長であるかのごとく思えたに相違なかった。

日が赤く円く、それでも鈍く寒く、今はオホーツク海の遥かに沈みつつあった。