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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

の一連が集って盛んに鬱憤を晴らしていると、その席へ有島生馬君の携えて来たのが『白樺』の創刊号であった。それから時代が次第に浪漫派から人道主義に転々して行ったものだったな。それにいわゆる新感覚派の芸術といえそうな開放運動はあの以前木下杢太郎や私なぞが夙うに済まして来たものだったな。

だが、時は過ぎた。赤い蒸汽の船腹の過ぎゆくごとくである。

「かお、かお、かお、かあ、くるっくるっ。」

や、鴉だなと私は向うの電柱の頂辺を眺める。無数の白い碍子と輝く電線、それに漆黒の鴉が四、五羽も留っている。紫に見える。

「くるっくるっ。」

これは鴉の独語である。実に円い音をころがす。上機嫌の場合にそれが限るのである。

鴉は並んだり、向きを換えたり、上へ跳ねたりする。子鴉だなと私は見ている。と、葛飾の生活が目に浮んで来る。私は子鴉とよく話をした。よく遊んだ。しかし、それが今に何の係りがあろう。

この現実の灰色の亜鉛屋根ばかりの、それでいて尖った旧式の装飾頭をつけた棟の連続、汽船の煤煙、薄ら寒い輝かぬ海港、雲の群れて曇った空、そうした見馴れぬ北国の風物に直面している私である。