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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

埃と雨との沁みついた硝子障子はことごとく閉めきったままだ。習慣とは恐ろしいものだなと思う。それにどの敷居にもただ一筋しか開閉の途がついていないのだ。それでいて、流石に夏は夏である。暑い、蒸される。それでいてまた、硝子障子がガタガタと響く、風が吹きつける。

だが、せめて北の方でも一枚ぐらいは開けてもよさそうだと、私は卓上電話の受話機を採る。とその埃りっぽい薄膜の耳がポロリと落ちる。それを慌てて継ぎ合せて「もしもし」である。

鳶のような大鴉がまたしっきりなく屋根から屋根へとわめく。

「小樽というところは鴉の多い港だよ。」私は小田原の我が子へ書く。

スイカダ、スイカダ、ランチ、ランチ

つい、着いたばかりに発信したが、あの高麗丸から海岸の西瓜の山を瞥見してそれこそ子供のように小躍りした鮮新さや、青や白や鼠色ランチの馳せちがう、やや煙で黒っぽい油絵風の画趣からも、今はもう午前十時の観想は離れてしまった。

そこだ、現代の未来派でやっつければ、

鴉、鴉、鴉、鴉、

灰色、灰色、灰、灰、灰、亜鉛、亜鉛、亜鉛、

尖塔、電柱、線、線、線、

+×△□、!!!!!

2幽霊、H2O 過酸化マンガン。