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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
猾智で放埒極まるものだそうである。まるで鴉の王国といった風だそうである。初めて私はこの小樽でそれを思い当った。
今の私は以前の私ではない。現実という黒い鴉が私を見ている。燻し鰊の私を。
白き猫膝に抱けばわが思ひ音なく暮れて病む心地する
この浮薄と衒気とを省みると、何が音なく暮れてだ、何が病む心地するだろうと赤面する。そこで朱線を引いてしまう。
白き猫ひそけき見れば月かげのこぼるる庭にひとり戯れぬ
これと換えよう。どうだと、昨日も船の中で庄亮の方へ向くと、それは観想が深過ぎるという。昔の歌ではない、今の君の歌だという。それでも越前堀の月夜の庭で、真実に同時に見たものだと私が答える。ただあの時は見てはいたが歌えなかったのだ。それが今の技巧で出て来たのだ、構やしないだろう。と私は意地を張る。だが、ちがったのは技巧ばかりじゃないよと彼はいう。ふふむ、あの頃の生活ということを考えると、今度の新しい歌集にも入れられない、かといって、「桐の花」ともちがうとすると、仕方がない、逆戻しかとまた私が折れる。その方がいい、過ぎ去った昔の歌集に入れるのは惜しいじゃないか、今更誰だって新しいものとは見てはくれまいと庄亮君がいう。