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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

「それも何処か雄大でいいさ。」と私が笑う。

「雄大は妙ですな。」

八時半にやっと総勢で自動車に乗る。

駛る、駛る。私は早朝上陸して、この夜になって初めて小樽の市街を見るのだ。

「や、明るい明るい。」

全く、通りは広いし、電燈飾は華美だし、雑踏する群集も真夏の軽装だし、一々にそれらが鮮新な発光体となって遊泳して、両側のショウウィンドウの中までが、まるで水晶宮のように水々しく照り反すと、花屋がある、植木屋がある。それから活動小舎がある。絵看板がある。幟が並ぶ。銀座と六区とを一つにしたように殷賑である。

「縁日だね。」

という間に何か公園の入口らしいところで自動車が停まる。矢野倶楽部である。

二階の広間へ上ると、四十余名の会者がすでに集って三方に居流れている。床柱の前に二人が据えられる。みんなが一斉にこちらを向く、そうして堅くなっている。

潮音の旧い社友で、土地の歌壇で元老株のお医者さんの山下秀之助君が一場の歓迎の辞を述べて、これが済むと、また皆が私の方を向く。講演は嫌いだから初めからお断りしてある。それにどうも挨拶といったところで、私なぞは結論が序論と一緒になってしまうので一言二言いえばいつもそれでおしまいになるのである。