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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
と、島独特の黄色い円い面をした童子が赤いトマトの累々とつまって盛り上った竹の籠を両手に擁えて、山坂などを上って来る。その髪の毛に円光が立つ。私は或日、とある山道の曲り角でそうした童子と、突然に遭遇って実に驚いたものであった。行き過ぎてからでも私は後ろを幾度振り返ったか。礼拝したくもなった。
だが、小樽や札幌のトマト畠が果してどうした香気の風景であるか。その漿水の発散は、光線の層積は、まだ私の目には浮んで来ない。
「吉植君。君も印旛沼を開墾したらトマトをこさえろ。」
「こさえるとも。」
「五十町歩すっかりトマト畠にしてしまいたまい。」
「やああ、それでは飯が食えなくなる。」
*
私の語法は現在格で進める。この方が楽だからである。
そこで、フイルムが変る。
夕方、庄亮の主宰する橄欖社の小樽支部の人たちや、此処で出している『原始林』の同人たちが五、六人で迎えに来る。私の仕事はそこでひとまず明日の出帆前のことにする。入浴して、さて晩餐を済まして、会場へ行こうというのだが、宿の方の支度がなかなか整わない。
「どうも北海道は悠長ですよ。」と誰やらがいう。