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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
帰り途の自動車の中ではO君から
「あまり踊ってはいけませんよ。」
とまた叱られる。
「おもしろくてしょうがなかったんだ。やあ。」
一寸と頭をかかえてしまった。
*
「や、すばらしいトマトだな。」
若紳士戸塚君が実に清新なトマトを一籠提げて来た。
「これはいい、船で十分に食べられるぜ。」と庄亮が喜ぶ。
「大きいのは俺が食べることにする。」
「や、そりゃとにかく、君は仕事はどうしたい。」
「もう止した。幽霊の重荷は御免だよ。それにとても間にあいそうにない。第一昔の歌ばかり改訂していたんでは、何のために旅行に出たかわからなくなる。陰鬱になる。君の監督はこれで辞任してもらいたい。将来に生きることをしないでどうするのだ。僕はこの旅行を全然楽しむ。」
「そうか。わかった。もう何にもいわぬ。」
さあ出かけようとなる。決断してしまうと、心から晴々しい。口笛でも吹きたくなる。往来に出る。
心は軽く、気は安し、
揺れ揺れ、帆綱よ、空高く………
「やあ、先生。」と九州男子のY君が胸を反らして髭をひねって来る。
「やあ、どうしました。」
「定山渓へ行たて来ましたたい。団員は誰でん行た。