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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
当の七日の正午には、私は桜木町から税関の岸壁を目ざして駛っている自動車の中に、隣国の王やアルスの弟や友人たちに押っ取り巻かれて嬉々としている私自身を見出した。それから高麗丸の食堂ではそろって麦酒の乾杯をした。驚いたのは同行すべきはずの庄亮(歌人吉植君)が解纜前五、六分前に、やっとリボンもつけない古いパナマ帽に尻端折りで、「やあ」と飛び込んで来たことである。「アッハッハ」と豪傑笑いをして一寸頭を掻くと、首をすくめて、
「なに、いや、そのう、銀座でこれをやっていたんでね。」と左を利かせる。あくまでも飄々としていたものだ。
「こりゃああぶないぜ、吉植君、これから上陸する時には、よほど気をつけないと、それこそ鬼界ヶ島の俊寛ものだよ。」
誰やらが一本参った。
「いや、大丈夫、僕がついてるから。」
「その兄さんがまたあぶないからな。」
「そこは俺が引き受ける。」
「どうだか、二人ともさぞきこしめすだろうな、こいつあ、どっちも剣呑だ。」
また後ろで奇声をあげたのがいた。
ジャランジャランジャランと銅鑼が鳴ると、税関前に降りた一同はしきりに万歳をとなえてくれた。それから各自にカメラを向ける。