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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
どうせみんなが酔っていた。私の周囲にはいつのまにやら三等客の学生たちが有りったけの蛮声を張りあげていた。ピアノを弾く者もいた。踊る者もいた。それをまた覗きに来て、ぞろぞろとはいり込む人々で食堂がいっぱいになった。方々の窓にはまた黒い赭い白い顔と手とが鈴なりにぶら下った。その時、大柄ののっぽうの、それでいていつも棗のような顔をして眼の細い、何か脱俗している好々爺が著て来たのがこれであった。
「これはいい、僕が貰っとく。」
そこで、私の麻の浴衣と脱ぎ換えさしてしまった。すると、背の低い小さい小さい実直そうなお爺さんの頭にのっけた鼠の頭巾が目についた。
「お爺さん、その帽子はいただきますよ。」
小さなお爺さんはちょこちょこと私の前に来て、その頭巾を「へい、どうぞ。」と差出した。
「朝鮮の王さま出来ました。」と誰やらが頓狂に叫んだ。
一同礼拝、ハハッ、であった。
こうして身につけてしまったのであったが、朝になると、浴衣と帯とは談話室の椅子の上に畳んでキチンと載っけてあった。となると、支那服は返さねばなるまいが、どうにも欲しい。で、朝から両手に桜麦酒をかかえ込んで遊びに来た九州は福岡の読売新聞の支局長だというY君に、