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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页
「あたしの頂く分はどうなるんです」
「それはこの次に話そう」
「播磨屋へ入れるお金は」
「明日にでも来るから、そのときなんとかしよう」
「おい強欲医者」と云った、「きさまはこんなしょうばいを隠れてするくらいだから、本業のほうでもうまい汁を吸っているんだろう、診立て違いで病人を何十人も殺しながら、儲けるだけはしこたま儲け、その金で日済し貸しでもやってるんじゃないのか」
「手きびしゅうございますな」と得石は軽くうけながしながら、帳面や矢立を手提の中へしまった、「おかね、こちらさまのお席をここへ移してあげたらどうだ、私はこれで帰るから」
「うしろ暗いことがあるとみえて逃げだすな」と藤井が嘲笑した、「口髭なんか生やしゃあがって、ふざけた野郎だ」
「ようござんすよ、もう」とおかねが藤井の手を掴んだ、「どうなさる、ここで召し上りますか」
得石はすばやく廊下へ出た。鼬のような野郎だ、と藤井新五郎が云い、彼はいそいで階段をおりた。
「女なんてものは、どいつもこいつも」外へ出ると彼は悲しそうに呟き、首を振って、こんどは狡そうに笑った、「――まあいい、そっちでそう出るなら却って好都合だ、おくにもおかねも放逐してやる、裸で放り出してやるからそう思え、可愛やなんにも知らねえんだから、こっちにはおみのという」