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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页
彼は得意そうに笑って、注がれた酒を飲んだ、「ふだんどんなにとりすましている女でも、寝物語となるとあけすけになるものです、男のこっちが恥ずかしくなるくらい、思いきってあけすけになるものですよ」
「そうして、その、お婿さんのことを、二人で笑っていたのね」
「笑われるより笑えというでしょう」
「ではその二人が亡くなったから、いまは先生お一人で笑う番ね」
「それは済んだことさ」
「あたし先生の笑うのが見たいわ」
「済んだことだと云ってるでしょう」彼の持っている盃から酒がこぼれた、「いまはおみのさんという、可愛い人がいる、昔のことはみんなくそくらえだ」
「はい、お酌、――召し上れ」
「もういい、もうよしにします」
「あら、いくじのないこと」
「ひと休みだ」彼は横になりながら、すばやくおみのの手を掴んだ、「おみのさん、ひと休みしてから飲み直すことにしよう」
「放して、乱暴なことは嫌いよ」
「じゃあ隣りへいきますか」
おみのは顔をそむけながら「ええ」と頷いた。
「今夜こそ、じらしっこなしですよ」
「放して」とおみのは囁いた、「あたし先にいってますから」
十一
おみのは立って、隣りの四帖半へはいり、襖を閉めながら、嬌かしく囁いた。