轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页
父に抱かれて寝たり、子守唄をうたってもらった覚えがあるし、麻疹のときや疱瘡のときはもちろん、風邪をひいたぐらいのときでも、父は側をはなれずに看病してくれた。しかし母に面倒をみてもらったようなことは少なくとも自分の記憶には残っていない、とおしのは思った。母は自分に化粧をしてくれ、着飾らせて、芝居や寄席や、遊山や見物には伴れていってくれた。芝居茶屋でひいきの役者たちを呼び、自分と子役を並んで坐らせ、興がって酒宴をしたことも幾たびかあるし、母がなかまたちと一中節をさらうのだと云って、料理茶屋へ集まり、おさらいなどするようすもなく、男女の芸人や役者などを呼んで遊ぶ、などということも珍らしくはなかった。
――お父つぁんに済まない。
そんなときには気が咎め、こんど母にさそわれても決して遊びには出まいと誓うが、華やかでたのしい座敷を思うと、ついその誓いも忘れて、十か十一くらいの年まではそんなことが続いた。
――おっ母さんは平気だった。
こんなことはないしょだよ、と云ったこともないし、口止めをするようなこともなかった。十一ぐらいから、自分は母の誘惑を拒むようになり、しだいに母と疎くなった。