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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
蘭子は好奇心にかられながら、老人のあとに従って部屋にはいった。
そこは十五畳ほどの洋間であったが、中央に丸いテーブルと、婦人用の飾り椅子が二脚置いてあった。その奥の壁ぎわに、古めかしい天蓋つきのベッドが、物々しくすえられていた。ベッドは薄絹の帷に覆い隠されていたが、その絹をとおして、純白のシーツと、ぼんやりした人の姿とが眺められた。
「あたし、寝ていて失礼だけれど、勘弁してくださいね。爺や、その人に椅子を上げなさいな」
笛のようなお嬢さんの声が、薄絹の向こうからやさしく聞こえてきた。
蘭子は勧められるままに、老人と相対して、つつましく椅子にかけた。
「爺や、その人にあのことをよく話して」
お嬢さんは老人にこの娘を試験させて、自分はそばからそれを観察するつもりであろう。
「先ず第一にじゃね」老人は物々しくはじめた。「ここへご奉公するとなると、ご奉公中は一歩も家からそとへ出られないということを承知してもらわんけりゃなりません。お風呂はうちにあるし、買物などは、別の女中がいるから、それに頼めばよろしい。どうじゃな、あんたはそういう辛抱ができるかな」
「ええ、わたし構いませんです。