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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
わたしそとへなぞ出たくありませんから」
「おお、そうですかい。そと出嫌いかね。そいつは好都合じゃ。ところであんたの仕事というのは、ご承知の通りこのお嬢さまの小間使いなのじゃが、さっきも言う通り、お嬢さまはご病気なのだから、どんなことをおっしゃっても、お言葉を返してはいけませんぞ。万事おっしゃる通りにしてさし上げるのじゃ。わかったかね」
「あたし、わがままだから、そりゃ無理ばっかり言ってよ」
笛みたいな声が、からかうようにつけ加えた。
「ええ、なんでもおっしゃる通りにいたします」
蘭子はあくまでもつつましやかだ。
「爺や、あたしこのひと気に入りましたわ。なんて柔順な子でしょう。それに、可愛らしい顔をしているじゃないの」
お嬢さんは、すっかり蘭子がお気に召した様子である。
「それでは取りきめましても」
「ええ、いいわ。早く取りきめてちょうだい。お給金もどっさり上げてね」
「はなさん、お聞きの通りじゃ。親御さんの方へはいずれ詳しく手紙で申し送るとして、お前はきょうからここにいることにするがよろしい。別にさしつかえはないだろうね。ああ、そうか。よろしいよろしい。ところでお給金じゃが、お嬢さまのお言葉もあるので、これまでの例を破って、月百円ということにきめましょう。