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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
彼は道具方を買収して、そこのドアの鍵を手に入れていた。そとの暗闇には部下の自動車が待ち構えているはずだ。
彼は蘭子の両足を、コンクリートの床に引きずりながら、走りに走ってドアに達した。そして、ドアに手をかけ、一、二寸ひらきかけたかと思うと、彼はハッとしたように又それを閉めてしまった。
ああ、なんということだ。いったい何が起こったのだ。いつも淋しいそのドアのそとに、黒山の人だかりではないか。制服の警官もまじっていた。恩田がドアを細目にひらいたとき、そのすぐ前にギョッとする制服の背中があって、その警官がドアの音を怪しむように振り向きさえしたではないか。あとでわかったのだが、ちょうどそのとき、ドアのそとには酔いどれの喧嘩があって、その一人が血を流して倒れていたのであった。
恩田はもときた道をまた走り出した。そして、電動室の前までくると、そこのおぼろな電燈の下に、彼が買収した道具方の男が立っていた。
「どうしたんです。どこへ行くんです」
その男が恩田の狂乱のようすを見て、驚いて尋ねる。
「だめだ。あっちからは出られない」
怪人があえいだ。
「アッ、いけねえ。お聞きなさい、あの足音を。