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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

第一、幽霊なんぞというものは、この頃すっかり流行らなくなっているのだ。ただどうも腑に落ちないことは、この夏の矢追村においては、次から次へと、常識では到底考えられないことが頻発しているのだった。幽霊もその常識では考えられない。一つの現象として考えれば、考えられないこともなかったけれど、果してこの科学文明の世に、時代色濃い幽霊などが現れてよいものであろうか。

宿のお内儀は、ヨロヨロした足どりで、土間に下りて、息ぎれの水を飲みにいった。

そのとき、ワイワイという人声がして、大勢の足音が門の前を通りかかった。

「おう、おばア、いるかア……」

と、一人が戸口から声をかけた。

「おう、甚平さんか。……うちでは、えらいことじゃ。今しがた、二階のところをナ、白い着物を着た幽霊がフワフワと飛んでいたのじゃ」

「ナニ白い幽霊が。……お前の家にもか?」

「アレお前の家にもかって、他へもあの幽霊が出るのかの?」

「いや、いま村中はその幽霊のことで大騒ぎじゃ。太郎作のところへ出たのが最初で、それから小学校の用務員室に出る、酒屋の喜十の店先に出る……そんなわけであっちからもこっちからもの注進で、その図々しい幽霊は六ヶ所に現れよったのじゃ。