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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

彼は暗い公園を歩きながら、彼のいささか突飛な行動を弁護する様に、こんな事を考えていた。

(どう考え直して見ても、あれは小説の筋ではない様だ。青眼鏡の男は「あすの晩十二時」と云ったが、小説の筋を話す時に「あす」なんて云い方をする筈はない。「その翌日」と云うのが当り前だ。それに、あいつは空家の町名や位置を詳しく云っていたが、小説にしては、あんまりはっきりしすぎているではないか)

(確めて見れば分るのだ。若し青眼鏡が云った位置に、実際そういう煉瓦塀の空家があれば、もう疑う所はない。煉瓦塀の住宅は非常に珍らしいのだし、小説の中へそんな実際の空家を取入れるなんて、考えられない事だ。ただその空家が実在するかどうかが問題なのだ。それが凡てを決定するのだ)

相川青年は、今夜は態と制服をさけて、黒っぽい背広に黒ソフトという出立ちであったが、その黒い影が、公園を通りぬけ、桜木町から谷中の墓地へと、さも刑事探偵といった恰好で、歩いて行った。

谷中天王寺町の辺は、大部分が墓地だけれど、墓地に接して少しばかり住宅が並んでいる。その中に、小さな仮小屋の様な煙草店があって、まだガラス戸の中に燈が明々とついていたので、そこで尋ねて見ると、