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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

老探偵の挨拶に、四人の警官は物をも云わず、銘々右左から、青眼鏡と偽探偵の側へ駈け寄って、彼等の両手に飛びついた。青眼鏡の手を離れた長い槍が、音を立てて竹藪に倒れかかる。

「なんとうまく行ったことじゃ。これでさしもの妖虫事件も大団円という訳だね」

老探偵は、二人の悪漢が完全に繩にかかるまでと、なおもピストルの狙いをゆるめず、言葉を続ける。

「守さん、ご苦労でした。お父さんの様子はどうじゃったね」

守は珠子を抱いたまま振返って、

「有難う大丈夫の様です。意識だけは取戻しましたので、通りへ出て自動車を拾い、宅へ送らせて置きました」

と答えた。

「イヤ、あんたの機敏な働きが、非常に役に立ちましたわい。わしがこの偽龍介の隙を見て、たった一言耳打ちしたのを、ちゃんと呑み込んで、素早く立廻ってくれたお蔭で、この大捕物に成功しました。それにお父さんや妹さんの危難を目前にして、よく我慢を続けて下すった。流石は『探偵さん』じゃ。ハハハ……、今度の捕物ではあんたが第一の殊勲者と申してもよいですぞ」

そんな問答が取り交されている間、二人の悪漢は、未練千万にも、この期に及んで、繩をかけられまいともがき廻っていた。