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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

というのが、彼奴の気違いめいた論理なのです。

僕は、さい前から、三十分程、このショウ・ウインドウを見つめて、それを考えていたのです。どうしても、そうとしか思えないのです」

「一体君は何を云おうとしているんだね。僕は少し用事もあるのだが」

紳士が逃げ腰になると、怪人物はそれを引とめる様にして、

「イヤ、用事なんかいいです。この事件の方がどれ程重大か知れません。サア、これをごらんなさい。僕がさい前から、云おう云おうとしていたのは、これなんです」

と云いながら、インバネスのポケットから細く折った新聞紙を取出して、バリバリと拡げて見せた。

「サア、これです。ここに大きく出ている写真は誰だかご存知ですか。さっき買ったばかりの夕刊です。もう読んでいる方もあるでしょう。昨夜夜更け恐ろしい事件が起りました。

『赤蠍』。『赤蠍』を知らん人はありますまい。あの妖虫が、又ゴソゴソと這い出して来たのです。

三河島の見世物小屋で、活動写真みたいな活劇が演じられたのです。そして、相川珠子という美しいお嬢さんが、妖虫の為にさらわれてしまったのです。ごらんなさい。これがそのお嬢さんの写真ですよ」