轻松读懂日语经典作品
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
やがて、そのものは、それと分る程の姿を現わした。二つに折れ曲った関節、ゾッとする程巨大な平家蟹の螯、ガラス板にぴったり吸いついた赤黒い螯、それがワクワクと物を噛む形で開閉しているのだ。
赤い蠍!
アア、夢ではない。夢がそのまま現実となって現われたのだ。悪夢の谺の様に、突如として、信じ難き怪物が、人間程の大蠍が、闇の窓の外に這い寄って来たのだ。
夢ならば醒めることもあろう。だが、現実には全く救いがない。螯の次には、あいつの醜怪な顔が、ソッとこちらを覗き込むに違いない。それから、針の様な毛の生えた全身が、目まぐるしく動く沢山の脚が、醜くひん曲った尻尾が……。
余りの恐怖に、品子の五体のあらゆる機関が活動を停止して、全身が底知れぬ深海へ落込んで行く様に感じられた。青黒い水の層の中を、スーッと沈んで行く。沈むに従って水の層は益々暗くなって行く。そして、遂には文目も分かぬ真の闇にとじこめられてしまった。……彼女は極度の恐怖に気を失ってしまったのだ。
怪しの物
だが、その翌朝、朝の物音と太陽の光とが、彼女の意識を呼び戻した。ふと目を覚ますと、品子は別段の異状もなく、昨夜のままベッドの中に横わっていた。