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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

「空っぽでした。そして、外には全く手掛りがないのです。無論捜査は引続いて行われています。捜査課の全員が、東京中を走り廻っていると云ってもいい位です。僕はこの事を御報告旁、もう一度お宅の人達に、色々お尋ねして見たいと思って、やって来たのですが」

「併しもう手遅れではあるまいか。品子は今まで安全でいるだろうか」

桜井氏は非難の調子を含めて、強く云った。蓑浦氏は渋い顔をして沈黙する外はなかった。

「併し、ここに一縷の望みがあります。それは御承知の三笠龍介氏です。今も家を出る時電話で確かめて見たのですが、あの老探偵は昨日入院中の病院を抜け出したまま、今以て行方不明なのです。若しかしたら、賊の本拠を襲っているのではないでしょうか」

突然、部屋の隅から相川守青年が口をはさんだ。

「アア、あの評判の奇人ですね。併し、いくら老人が頑張っても、個人の力では、この大敵をどうする事も出来ないでしょう。東京中の何千という警察官が、血眼になって探していても見つからない奴ですからね」

蓑浦氏は一笑に附した。

すると、相川操一氏がそれを受けて、

「こいつは、三笠氏の心酔者でしてね。一にも二にも、三笠龍介なんだが、珠子の場合でも分る通り、流石の老探偵も、赤蠍には参っている様です。