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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

桜井氏が、イライラして、うまい敬遠策を持出した。

「ウン、それはわしも望む所です。では一寸守君を拝借しますよ」

老探偵はこの侮辱を別に怒る様子もなく、寧ろそれを幸の様に、相川青年を促して会議室を立出でるのであった。

守は渋々ながら、老探偵を伴って、案内知った洋館傍の小部屋に入ると、彼自身の危難の次第から、品子さん誘拐の顛末を、かい摘んで物語った。

老探偵は聞終ると、両眼をとじて、殆ど五分間ほども、身動きさえせず、黙り込んでいたが、守青年がしびれを切らせて、その部屋を立去ろうとした時、突然パッチリ目を開いて、又しても悠長なことを云い出した。

「わしは一度娘さんの誘拐された部屋を見たいのだが、誰にも知らさず、こっそりそこへ案内してくれまいか」

相川青年は、今更になって、そんな部屋を検べたとて手遅れだとは思ったが、この老人には何となく威圧される感じで、ついその申出を承諾してしまった。

「よござんす。女中達もみんな会議室のお客さんに気を取られているので、誰に見つかる心配もありません。では御案内しましょう」

だが、階段を上って、品子さんの部屋にたどりつくと、老探偵は、又変なことを云い出した。