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きょうふおう
恐怖王
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页
僕等の頭が揃いも揃って、少し変になっているのかも知れない。軽々しく騒ぎ立てることを慎まなければいけない」
布引氏が、あらぬ噂を立てられ、世間に恥をさらすことを恐れたのは無理もない所である。
で、鳥井青年は会社へ出勤するし、布引氏は同じく社用の為に外出するという訳で、その日は結局うやむやの内に暮れてしまったのだが、さて、その夜更になって、布引氏の上にも鳥井青年の上にも、申合わせた様に、非常な事件が起った。
先ず布引氏の方からと云うと、その同じ日の深夜、十二時に近い頃、彼は寝入ばなを女中の声に起された。
「アノ、お電話でございます。是非とも旦那様に出て頂き度いとおっしゃって……」
「うるさいね。明日にして下さいって云え。一体どこからだ」
布引氏は寝ぼけ声で女中を叱りつけた。
「アノ、アノ……」
女中はなぜか云いよどんで、モジモジしている。見ると、異様に青ざめて、声さえ震わせて、何かにおびえている様子だ。
「どうしたんだ。電話は誰からだ」
「アノ、照子だとおっしゃいました。確かにおなくなりなすったお嬢さまのお声でございます」
女中はやっとそれを云って、ひどく叱られはしないかと、オズオズ主人を眺めた。