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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
「まだ病中のお体で、急に旅へ立たれなどして、どうあろうな。お国許へとあれば、行く先に心配はないが」
「いや、きょう限り、病褥をあげて起きるつもりです。病に負けていては限りもなし、気分もここ数日来ずっと快い」
「――が、病の仕上げは、そこが大事と、よくいうこと。いかなる急用がおありか知らぬが、もう少し怺えてここに療養しておられてはどうかな」
「心のうちでは、この春と共に、もっと早く病間を出たいと念じていたのですが、実は、貴公の安否が分るまでと、心待ちに、旁、身の養生をもきょうまで長引かせていたところです。かく御無事を見とどけたうえは、それに懸る気残りもなし、同時に、安土城へ伺って、御処分を待たねばならぬ科もござれば、きょうこそ病褥あげの吉日、ここでお別れ申すことにする」
「安土の御処分をうけねばならぬ科とは? ……それは一体何事かな」
「まだ、おはなし申してないが、実は……」
と、半兵衛は初めて、去年から信長の命を拒み、今日まで敢えて「違背の罪を冒して来た事情」を彼にはなした。
官兵衛孝高は愕いた。何もかも初耳であった。自分の行動がそれほどまで信長に疑われていたことも。