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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
と予察されたのであった。
彼の直感は、過っていなかった。けれど幸いにも、それが自分に対するものかと惧れた心配は外れていた。
その日、信長が船中で書いていたのは、折奉書三枚にもわたる長文の折檻状であったのだ。――或る一臣下の怠慢に対して、日ごろの憤りを発し、峻烈な辞句をつらねて、その罪状を責めつけたものであった。
「いま大坂はお手に入り、積年の禍根はのぞかれ、こうして宇治の清流を、爽やかにそれへ向って御入城あろうという――かかる日に、どうしてそんなおむずかりを起されておいでやら?」
と、蘭丸はひとり呟いていた。けれど、こういう機微な心理になると、いくら信長の胸の中に住んでいるような蘭丸でも、
――わからぬお方。
と、つくづく思うしかなかった。
方八町四方という石山御堂の城構えは、三日三晩の火にかかっても、まだ一部の建物はのこっていた。
信長は、そこに入城すると、すぐ認めておいた折檻状を、中野又兵衛、楠木長安、宮内卿法印の三人にあずけ、
「佐久間信盛父子へ、これを渡せ」
と、使者の役をいいつけた。
信長が大坂へ入って、その占領地を検分の後、第一に発したものは、怠慢な臣下にたいするこの、