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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

秀吉は、何か、唐突な感じをうけたように呟いたが、すぐ思い当ったらしく、

「――ああそうか。お迎えして、あちらの客書院へお通しせい。ここは取り散らしておれば」

と、自分も立ち上がった。

ゆうべ安土へ暇乞いに登ったとき、信長から拝領物の目録を賜わった。その品々を今朝、蘭丸に持たせて、これへ差向けられたものであろう。秀吉はそう察しながら、客書院へ歩いていた。

案のじょう蘭丸は、国次の刀、十二種の茶器など、信長からの餞別の品を携え、上座に坐って待っていた。

相変らず美しい。華著な装いを凝らしている。すでに、今年あたり、二十三、四歳にはなるはずだが、今もって、世間が美童と目しているのも無理はない。

主君の使者なので、秀吉は下にすわり、一応の礼儀があって後、初めて話も日頃の親しみ振りに返る。

「もう、お立ちでしょう」

「いやいや、お急ぎ下さるには及ばぬ。いずれ一夜は京都のつもりですから」

「せっかくたまたまの御出府でしたのに、御休養の暇もなかったでしょう。しかし上様の御機嫌は近来にないものでしたな」

「訪客の多いには閉口いたした。柴田どのも北陸から今日あたり御着府とか」