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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
御腰蓑には白熊、鞭をおびられ、白革のお弓懸には、桐のとうの御紋あり、猩々皮の御沓に、お行縢は金に虎の斑を縫ひ、御鞍重ね、泥障り、御手綱、腹巻、馬の尾袋まで紅の綱、紅の房、鞦には瓔珞を付させられ――
と、実地に見た者の感激を、そのままここに借りるとしたら、それは際限もないくらいな描写である。
もっとも、この日に着用する信長ひとりの装束のため、京都、奈良、堺などの唐綾、唐錦、唐刺繍の類から、まだ一般には珍しいゴブラン、印度金紗、南蛮織のあらゆる物まで、選り蒐めてその粋を凝らしたものだった。細川与一郎――藤孝の子の彼なども、その係の一員だったので、信長の着用する蜀江の小袖の袖口につかう金縒を捜すため、京都中を奔走してようやく適当な品を見出したというほど、金力と人力がそれまでには費っていたものである。
(――まるでこの世のお方とも見えない。住吉明神の御影向でも仰ぐようだ)
と、その日の群集が、ただ、もう礼讃したというのも、あながち誇張な嘆声ではなかったであろう。
織田家の血すじは、総じて美男型であり、女子はみな美人である。この年、信長は四十八歳、なお端麗な余風をとどめているばかりでなく、気稟はまだ青年に劣らず、眉にも頬にも化粧をほどこし、きょうを曠と装ったのであるから、陪観の外国人の群れ――耶蘇会の代表者などもみな