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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

「そこまでは、航路どれほどな日数を要するか」

「長崎から媽港あたりまでですと、順風でおよそ十四、五日には着きましょうが、それから先は天候まかせで、予定の日をもっては参るわけにゆきません」

「どうして」

「暴風雨にあえば、島に寄って隠れ、船が壊れれば、船を修理し、道程ではなく、度胸と根気の航海ですから」

「その方たちは、至極、審らかなことを申すが、いったいそのような航海をして、南蛮までも参ったことがあるのか」

するとまた三名は、曖昧な笑顔を示しているだけで、口をつぐみこんでしまった。お互いに答えを譲り合っているらしいのである。

「ないこともございませんが――」

と、やがて中の一名が思い切ったように答え出して、

「それを仔細に申し上げますと、だんだんわれわれの前身が――つまりおさとが知れて参ることになり――この儀は主人九鬼嘉隆よりも、平常、図に乗って自慢げに語ることは相成らぬと、固く戒められておりますことゆえ、ちと、どうも」

「これこれ、それは自慢顔に無用なおしゃべりは慎めといわれたのだろう。大隅殿(嘉隆)に叱られたらわしが詫びてやる。どういうことだ、語って聞かせい」