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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

また、この半兵衛が御命を違背した罪も、同様、みずから寸功をたてて償うべし――と、かように御意下されば、これに越す君恩はございませぬ」

と、心底のものを吐露するように、ふたたび平伏して信長の公明な仁恕を仰いだ。

もとより信長の気もちも、そうありたかったことである。半兵衛はあらためて、信長からその寛大を得ると、

「ようお礼を申しあげなさい」

と、傍らの於松へささやいて、臣礼を訓え、そしてまた信長に向っては、

「両名とも、或いは、これが今生のおわかれとなるやもしれませぬ。弥栄の御武運を祈りおります。今日は先もいそぎますれば、これでお暇を」

と、いった。信長は、解し難い顔をして、

「今生のわかれとは異なことをいう。それでは重ねて予の意に反くというものではないか」

と仔細を追求した。

「決して――」

半兵衛は、顔を振って、傍らの於松の扮装へ眼をそそぎながら、

「ごらん下さい、この和子の身支度を。すぐここより父孝高のいる播磨の陣へ参って、父に劣らぬ勲を立てて、華々と生死の関頭に、将来の命数をまかせる覚悟にござりまする」

「なに、では戦場へ行く気か」

「孝高も名ある武士、於松もその人の子。