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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

「愚にもつかん輩ではある。最前から何をもじもじ云い憚っておるかと思えば、前身、和寇と呼ばれていたというだけの遠慮か。いやはや、笑止千万。そんな小さい胆を持って、よくも海上を暴れ廻っておられたもの。主人九鬼殿もちと分らん男であるな。――八幡船、和寇、何がいかんか。秀吉なども、もし、十六、七歳の頃に、その方どもと巡り会うていたら、かならず汝らの手下に属して、南海西蛮大明高麗、ひとわたりはぜひ見物しておいたろうに、残念に思う。――いや、まったくだぞ」

「はッ……」

三名が、首を揃えて、恐縮すると、秀吉は銚子をつきつけて、

「順に、杯を持て、あらためて一巡酌してつかわす。……よく致した、よく致した」

何を犒われているのか、彼らには自覚がなかった。故に秀吉は、銚子を下に置くと、それを歯痒がって、諭すのであった。

「和寇というもの、いつのまにか、海上に影をひそめてしまったな。惜しいものとはいわん、また秀吉、奨励もせんが、自体、八幡船の活躍は、起るべくして起ったものだ。……と、思わんか」

「はあ」

「遠い上古、神功皇后さまの挙を今日より偲び奉っても、あの前後からすでにいかにこの国を侵さんとする外夷があったか思いやられようが。