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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
こんな倖せなことがあろうかと、秀吉は真実そう思うのであった。
海外について学ばねばならぬ。徐々に、眼孔の小さい諸将にも、狭小な考え方を改めさせてゆかねばならない。
(ああ濤音がする。この濤は、大明の岸をも搏ち、南蛮の島々にしぶき、西欧の国へもつづいている。古来、この国の者は、何でこう日本の内にのみ屈曲してせめぎ合って来たことだろう。ひとり信長公に至っては、従来の英雄とすこし型がちがっていて、眼界のひろさが、けたちがいだ。かつてない文明人でもある。旧い物にはすさまじい破壊力をあらわすがまたそれ以上の建設的な情熱を持っておられる。お年は明けて四十九歳、なお、二、三十年は優に御活躍できよう。よしこの二十年に……)
秀吉は唇をむすんでほんとに深い眠りに入った。けれど彼を乗せた船はまだついそこの山陽の地へさしてゆくに止まる。しかも人生の測り難さは、この帰路の旅が、主君信長との最後の別れになりつつあるものとは、遂に、夢にも知らずにいたことであった。
中国陣
秀吉は姫路へ帰った。
帰る匆々、彼は中国総司令官として、誰よりも高いところに位置していた。
播州、但馬、美作、因幡などの占領下の諸将は、入り代り立ち代り姫路を中心に去来した。