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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

彼は急に馬を降り、従者の一部だけを連れて門内へ入って行った。

「右府様のお立寄りですぞ」

先に駈け出していた池田三助が扉を排して、階上に呶鳴った。

階段の下の廊下には、大きな裸男の彫像があった。基理蘇督の像か何か三助は知らない。三助はつい珍しげに見まわしていた。

「おう……」

牛のような声が答えた。階上からである。二、三人の宣教師があわただしく降りて来た。信長はもう家の中に立っていた。

「オオ。君主さま」

宣教師は、仰山に表情して、最大な敬意と不意の愕きを、こもごもに示した。

ここは隣の南蛮寺と共に創てられた附属耶蘇学校であった。信長も寄附者のひとりだが、高山右近だのそのほかの帰依大名が、材木から校舎の内の物まで、一切寄進して出来たものである。

「授業の模様を参観いたしたい。子供らは集まっているだろうな」

信長の望みを聞いて、宣教師たちは狂喜しながら光栄を語り合った。そのおしゃべりに関いなく、信長はどしどし階上へ登ってゆく。

狼狽を極めながら、宣教師の一人は先に教室へ走って、生徒達にこの唐突な貴賓の参観を告げた。

提琴の音がはたと止む。私語がしんと鎮まる。