轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
明朝辰の下刻(午前九時)までには、かならず寺中から挨拶に出向く――という雪岑長老の口約束をとって。
さればとて、もちろん警戒の手はゆるめない。織田勢は終夜、村の道々に、大篝を焚いて、半ば威嚇していた。
ところがその夜半に、恵林寺の裏山づたいに、そっと脱け出したものがある。三人の法師だという。上福院、佐々木次郎、大和淡路の変装したものに違いない。見とどけたのは織田兵ではなかったが、山小屋の樵夫が降りて来て、朝になって村へ訴え出たのである。
「なぜ、夜のうちに知らせぬか」
と、訴えたあげく、二人の樵夫は、胆のちぢむほど叱られた。
時刻といえば、すでに辰の刻だった。
「寺中からの挨拶など待つまでもない」
河尻肥前守、織田九郎次、関十郎、数千の兵は、山門裏門から恵林寺へなだれ入った。
方丈、庫裡、いずこも、掃き清めてあってきれいである。ただ、内陣にあった信玄の木像がない。またどこかへ寺宝の文書や墨付などは運び去ったらしく、ひらひらと、そこらにこぼれ落ちている数片が眼にとまるだけだった。
「や、や。人もおらぬ」
「どこへ?」
このうろたえは、すぐ解決した。寺の四方から火を放けても、転び出す者はほとんどなかった。