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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

で、ここにも君側から離れずにある森蘭丸なども、ひそかに、

「このぶんでは、過去のことなど、すこしもわれらには御懸念もないらしい」

と、受賞のよろこびよりは、むしろ母の妙光尼のために、胸なでおろして、森一家の累進を、ひとり祝っていた。

「お兄上の長可どのにも、信濃四郡の封を受けられ、まことにお覚えのめでたいことで」

と、羨む人々から祝辞をいわれても、以前のように、そう後ろめたい気もしなかった。

祝宴の席でも、蘭丸の面には、つつみきれない得意があふれていた。

信長から、於蘭、ひとつ小舞せい、といわれればすすんで舞い、鼓をせよと命じられれば、非常によい高音をその掌から出して聞かせた。

「きょうは、惟任どのにも、めずらしくお過しになられてみゆるの」

座中、どこかで、そんな会話が聞える。みると、諸大将のうちに光秀も交じっていた。話しかけたのは、隣の滝川一益であった。

「酔わいで何としましょう」

光秀はまったくいつにない酒気に染まった顔をしている。信長から何かというとよくいわれる「きんか頭」のすこし禿げ上がった生え際まで赤くてらてらさせていた。

そして一益へ、

「一盞、いただきましょう」