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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

「内蔵助。もうよいぞ。そちも心を労うな。さばさばいたした」

「きょうのお顔色では、凡ならぬ御不快と、実は、お案じいたしていましたが、なによりでございました。……では、お耳に入れますが、お留守の間に、珍客が見えられて、お帰りをお待ちしておりまする」

「ほ。この戦場の仮宿へ、珍客とは」

「画師の海北友松どのが、ちょうどこの甲州に旅しておられ、他は訪れぬまでも、殿にはちょっとでもお目通りして、御機嫌を問うて参りたいと、昼から来ておりました」

「どこにおるの」

「てまえの部屋と定められたあの隠居所に控えさせておきました」

「そうか。ではそちの部屋へ参ろう」

「殿からお運び遊ばされては、客が恐縮いたしましょう。後より御前へ連れ参りまする」

「いやいや、客は一風流子、格式張るには及ばぬ」

母屋の広間には、光秀のため、鄭重な夜食が支度されていたが、彼は、内蔵助利三の部屋で、客の海北友松を交え、至極簡素な夕食を共にした。

友松と会ってからの彼は、いよいよ明るい面もちに返って、南宋北宋の画風を問い、東山殿の好みと土佐の絵所の比較を論じ、また近世の山楽などの狩野調から和蘭陀絵の影響などにいたるまで、その方面にも日頃から浅からぬ修養のあるところを洩らして、ひいてはなお、