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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

その供養に建てた政秀寺はここから近い。清洲の城から信長は今こそ、爺や、安心してくれよと、胸のうちで云っていたにちがいない。

政秀ばかりではない。その老臣に、懇々、亡きあとを頼んで逝った信長の父も、おそらくは、

(あれが、成人しても、この清洲一城が、無事に保ってゆければよいが)

と、いまわの際まで、案じていたにちがいない。そしてその信長が、今日の如くあろうとは、夢にも思っていなかったであろう。

二十日は、岐阜に着く。

稲葉山の新緑に、また、ここは信忠の城でもあるし、信長はもうわが家に帰ったようなここちである。

だが、翌朝は、また早立。

ろくろの渡しでは、お座船飾りして、稲葉伊予が、船中で一献進上する。

垂井では、ここにも休息の屋形をしつらえて、犬山の御坊――去年武田家の質子から送り帰された信長の末子が――待ちもうけ、やはり一献進上の儀があり、今洲でも、佐和山でも、山崎でも、ほとんど一駅一駅に、茶屋屋形の設備と、織田領下の各臣が出迎えに出ていた。

その人々には。

丹羽五郎左衛門、山崎源太左衛門、不破彦三、菅屋九右衛門などがある。

湖畔に出ると、近くの長浜城から、羽柴家の臣が、秀吉の留守とて、名代に出ていた。