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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

「武功ならば、武人はたれもひとに譲らん。禁門の御普請、洛中の市政、いろいろな財務。御房はふしぎな天才じゃ」

「賞めるのか、くさすのか」

「されば、武門の中では、めずらしい異材でもあり、生れ損ないでもあると、正直、賞めたりくさしたりしておるわけです」

「お身に会っては敵わんよ」

日乗は、からからと笑った。

大きな歯がもう、二、三本抜けている。年齢からいえば、秀吉などとは大きな差がある。しかし、息子ほど年下な秀吉ではあるが、日乗の眼には、かなり大人に映じていた。

ただ、日乗の感情は、光秀に対しては、そう楽に溶け合えなかった。ひとしく彼の才識を認めているが、秀吉の揶揄に腹が立たなくても、光秀の寸言は、何かするどく神経をついてくる。反撥してみたくなる。

「わしだけの考えかと思うていたが、近頃、同様な言をふと耳にした。これは骨相を観る名人といわれている者。その言に、誤りはないと思う」

「人相観が惟任どのを、なんとか、評したのでござるか」

「人相観などではない。当代の碩学だ。中国で名僧の聞えある、安国寺恵瓊という者が、ひそかにわしへ申しおった」

「何といいましたか」

「気のどくだが智に溺るる智者の相だと。