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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

と、彼方へ立ち去った。

見送っていると、街道すじの民家から、弟子僧らしいのが二人、師の影を見ると、あわててあとを追って行った。

堀尾茂助ひとりを連れて、秀吉は戦場のような工事場のほうへ足をすすめていた。彼は、この築城には加役程度で、責任のある役は割り当てられていなかったので、度々、早船で来てはまた長浜へ帰っていた。

「羽柴どの、羽柴どの」

呼ぶ声がする。――見ると、蘭丸がきれいな歯並を唇もとに笑みこぼしながら、駈け寄って来た。

「やあ。於蘭どのか。殿には、どこにおられますか」

「今朝から天守でおさしずでしたが、今し方、お退りあって、桑実寺で御休息中です」

「では、それへ参ろう」

「羽柴どの。いま彼方で、あなたと親しげに語っていた僧は、安国寺恵瓊とか申す人相をよく観るひとではありませんか」

蘭丸は、何かそれに、興味をもっているらしい口吻でたずねた。

「左様。たれやらにも、そんなはなしを聞いたことがあるが、観相などというものは、中るやら、中らぬものやら」

秀吉は大して興もない顔していう。――しかし、蘭丸の性格と君側にあるその位置には、充分な認識をもっている彼のこととて、わざと、掴みどころなくしているのかもしれなかった。