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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

すると、彼の母は、

「ほう、神さまへ、お詫びをして来ましたか」

と、子の顔を見まもって、微笑んだ。

秀吉は、大真面目に、

「されば。――そしてその次には、母上にお詫びをし、女房どのにも、少しばかり、あやまろうかと存じまして」

「わざわざこれまでお越しとな……」

「はい。――という秀吉の気もちをお汲み下されたら、もう形をとって、お詫びするには及びますまい」

「この子の、狡さよ」

と、老母は、無性に笑い出して、

「わしはよいが、寧子には、真似事ほどでも、すまなんだと、いうてやってはどうかの」

「滅相もない」

と、寧子はあわてて、

「……どうしましょう、そんなことをしていただいたら」

と、ほん気になって拒んだ。

もとより家庭的な戯れにすぎない。けれど老母は、どうして秀吉が、急にそんなことをいい出して、いつにない快活な顔をここへ見せに来たか、多分に疑っていたが、まもなくその理由はすぐ解けた。

小姓頭の堀尾茂助が来て、

「ただ今、御城門へ、安土からのお使いとして、前田又左衛門様、野々村三十郎様、おふた方、お渡りでございまする。――御上使とのこと、すぐ彦右衛門どの、御案内に出られて、客殿までお請じ申しあげておりまするが」