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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

秀吉から云った。

住職は佐吉を顧みて、

「このとおり大喜びでございまする。佐吉、ようく、おねがいをなさい」

「…………」

佐吉は秀吉を見て、にことしながら、両手をつかえた。何もいわなかったが、秀吉は満足な眼をもってそれに答えた。

「城中へ参ったら、あれらの者と仲よくせねばならぬぞ。――於市、於権、於助」

「はい」

「きょうから、そち達の組に入る石田佐吉じゃ。おとなしいと思うて、あまり虐めるな」

「はい」

「茂助。面倒を見てやれよ」

「かしこまりました」

堀尾茂助は、佐吉に向って、ていねいにいった。

「小姓頭の堀尾でござる。これからは、何分とも」

すると佐吉も、いんぎんに向き直って、挨拶を返した。

「この近郷の郷士、石田源左衛門が子、佐吉と申す不つつか者でございます。よろしくお引きまわしのほどを」

これが十三の少年とは思えなかった。その成人ぶった容子を見て、於市や於権は、寺を立つとき、そっと囁きあっていた。

「オイ、こんどの稚子は、於虎なんかより、よっぽど、生意気そうだぞ」

「さむらい雛みたいに、いやに澄ましていやがる」

「雛ならいいが、らっきょうみたいなやつだ」

「いまに皮を剥いてやろうよ」