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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
05 第五分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页
御自分の功に代えてもといっておられるから」
「そうでない」
と、渋面作って――
「明智、佐久間などの徒は、村重が叛いたと聞くからに、手をたたいて、歓んだという。わけて十兵衛光秀は、慰撫の使いとして、これへ参り、おれには美言を以てなぐさめていたが、君前へもどったら、どう復命しておるやら知れぬ。――うかと、城を開いて、信長公の膝下へ帰ったがさいご、この襟がみつかまれて、首を打てと、左右へ命じられるそれだけなもの。老臣、家中の若手、みな復帰には同心せぬ。かくなる上は飽くまで戦うに如かず――となっておる今だ。もう村重の一存だけではどうにもならん。播磨へ立ち帰ったら、くれぐれも筑前へ、悪しゅう思うてくれるなと伝えてくれ」
急には説伏できそうもない。官兵衛はまず根気と粘りを丹田に命じた。そして数献の後、
「そうそう」
と、忘れていたかのように、小寺政職のてがみを取り出して、村重にわたした。
書面の内容は、官兵衛も一読している。秘封ではないからである。簡単だが、村重の挙に対して、政職の立場から切に諫めたものであった。
「…………」
村重は、燈火をよせて、それを披いていたが、読み終るとともに、