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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

「お取り上げになる日を、わたくしたち、どれほど渇望しているか知れませぬ」

「どうやら、許してやる日が近づいて来たようである」

「えッ、おゆるし給わりまするか」

「無条件ではならん。およそ何の功もなき者へ、ただ恩典を与えるということは、われわれ武門にはないことだ。ひとつの功を立てて欲しい」

「……それは、どういう御意でございましょうか」

「高槻の高山飛騨守が伜……あれは十四歳の頃から切支丹に帰依した熱心家だそうだが……師父とは特別に親しかろうな」

「高山右近さまのことをおたずねでございますか」

「そうだ、あの右近の儀であるが――。知っての通り、彼は荒木村重の謀叛に与して、二人の子を伊丹城へ質子となし、共にこの信長へ故なき弓を弾かんとしておる」

「……嘆かわしいことにございます。わたくしたち宗門の友達どもは、どれほどそのために胸をいためて、蔭ながら、天主の加護をお祷りしているか知れません」

「そうか。……だが、オルガンチノ、こんな時、ただ南蛮寺の礼拝堂で、祷ってばかりいたところで何の効き目も顕われまい。――それほど右近の身を案じるなら、いま信長がいいつける命を奉じて、高槻城へ行くがよい。